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「はあ……。」
漏れる溜息は、一体何回目だろうか。
土曜日のお昼過ぎ、忙しかった客足は引き、
俺は「ハルオ」の店内でボーッとメニュー表を眺めていた。
「どうしたの、コタロー君?」
出前箱をタオルで拭いていた杉田君が、不思議そうに俺を見て来る。
「コタロー君が物思いに耽るなんて、珍しいね。」
確かに。
今までこんな風に、何かについてここまで悩んだ事はないかもしれない。
悩んでみたって。
解決法なんて、これっぽっちも思い付かないけど。
「……杉田君は、悩みとかあるの?」
遊び呆けているように見える彼でも、一応それなりの大学に通う年上だ。
何か参考になるような意見が、聞けるかもしれない。
そんな風な期待を胸に、マジマジと杉田君の顔を見つめた。
「悩み?うーん……………………今日のまかないは、なに焼きにしようかなぁ、とか?」
「…………………。」
うん。
そういう人だよな、杉田君。
「父さん、杉田君の今日のまかない、具なしでいいって。」
「ちょーっ!?コタロー君!!」
慌てて父さんに、「違います違います」と叫ぶ杉田君を横目に、俺はまた大きな溜息を吐いた。
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