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噛み合わない会話に若干の苛立ちを覚えつつ、ここは根気良くお話でことを穏便に済ませようと思った。
だって、こいつ。
なんか、怖いんですけど。
「あのさ、ハッキリ言うけど、俺は女の子が好きなの。
男を好きになる事は、今までもこれからもあり得ないよ。何故なら女の子が好きだから。
なので、諦めて下さい。」
俺は昔から、言いたい事をハッキリと言える性格だった。
嫌な事は嫌と言うし、嫌いなものは嫌い。
否定する事に躊躇った事なんて、もしかしたら一度もないかもしれない。
だって、自分の気持ち押し殺してまで賛成するなんて、そんなしんどい事してられないし。
だから今だって、ハッキリ、きっぱり。
お断りさせて頂きます。
「………そうですか……。」
男はしゅんと項垂れ、顔を地面の方へ向けた。
ちょっと可哀想かな、とは思うけど。
でも、まぁ、仕方ない。
今はうつむいていて見えない男の顔を、何となく脳裏に思い出してみる。
よく考えたらこの人、結構イケメンさんだったよな。
目鼻立ちがハッキリとしていて、綺麗な茶色の髪がフワフワとゆるくウェーブを描いている。
爽やかでジャニーズっぽい、女子が好きそうな顔だ。
それに加えて身長も高いし、167センチの俺が首を少し曲げて見上げるぐらいだから、
もしかしたら180以上あるのかもしれない。
ちくしょう、羨ましいな。
その3センチでも俺にくれれば、170の大台に乗れるのに。
そんな関係のない事を、頭の中で妄想していると、男が不意に顔を上げる。
「ーーーじゃあ、俺が好きにさせてみせます。」
「……………。」
こいつ、思った以上にしつこい。
内に秘めていたイライラが、とうとう俺の顔に表れて来た。
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