第1章

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 真由は執行部の二年生の中でも古株で、一年生のときから執行部にいる。もともとは文化委員をしていて、先輩達の目にとまって執行部に入ったらしい。  こんなに忙しそうのに、二年生の委員長はまだ決まっていないらしい。  文化正副委員長を助けるために文化祭実行委員会がある。校内装飾、校外装飾、パンフレット、渉外、机脚、生徒会企画、弁論大会、バンド、クラコン(クラシックコンサート)、CM、暗幕、予算、警備、放送、図書、保健などなど。  文化正副委員長がする仕事に、各学年企画要項作成、クラコン募集要項作成、CM撮影募集要項作成などなど。  これは作成するだけでなく、文化委員会を開いて企画書を配布し、クラスで話し合いをさせ、企画立案、企画書回収、企画書の検討・決定、準備、をしなければならない。  地味に見えて活動していないように思われるが、実は多忙なのだ。  そんなある日。 「先輩、みんな!」  真由が、生徒会室に笑顔で入ってきた。よほど急いだのか、汗で前髪が額に張り付いている。 「どうしたの?」  そこにいた全員が真由の方を向いた。  そこにいたのは真由だけではなかった。もう一人、知らない女の子を連れてきていた。 「誰?」  省吾先輩が聞いた。皆も不思議そうな顔で見ている。  真由は注目されるなか、笑顔のまま言った。 「あのね、この子、村瀬由香ちゃんって言うんだけどね、文化委員長になってくれるって」  真由がなんで副委員長かというと、委員長になって表だたなくていいし、真由がそそっかしいのを皆が認めていたからだ。  真由では委員長はやれないだろう、残酷ながらそういう理由で副委員長になったのだ。  真由も自分でおっちょこちょいなのを認めているので、素直に副委員長になったらしい。  真由が言って、皆が騒ぎ始める。 「それ本当?」  省吾先輩が、皆が驚く。  真由が連れてきた少女、由香は少し緊張した顔でうなずいた。照れてもいるようだ。そして少し、嫌がっている雰囲気もあった。  それもそうだ。生徒会なんて忙しい部活に、進んで入る人間なんか滅多にいない。ここにいる人たちも、だいたいは嫌々ながら入ったらしい。  ある先輩なんか、いきなり先輩達数人に囲まれて、「生徒会に入ってくれない?」と言われたらしいのだ。先輩数人に囲まれて、嫌ですなんて人間がいるわけない。
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