第1章

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 とにかく、皆が見ているし、照れもするだろう。晴明はそう思った。  由香ははっきり言って、十人並みの顔だった。小さい目に、やけに大きい鼻。 「だよね? 村瀬さん」  晴明には、それが真由が強引に引っ張ってきたように思えた。なにより真由が由香の手を強く握っていたのだ。捕まえて離すまい、そんな感じだった。  仕方なさそうに(観念したようにも見える)、由香は言った。 「はあ……、そんな感じです」 「本当にいいの?」  省吾先輩が聞いた。現文化委員長の夕日先輩も、期待に顔を赤くしている。 「は……はい」 「やったね」 「よくぞやった、桜井」  そこにいた先輩達や仲間たちが喜ぶ。 「もうやばかったけね。委員長決まらないと。生徒総会も近かったし」 「でも、本当にいいの?」  省吾先輩がもう一度念を推す。 「はい」  どうにもなげやりな返事だった。 「先輩達もみんなも、いい人たちだから。絶対楽しいよ。やれるって」  真由が励ます。 「どこでゲットしてきたの?」  夕日先輩が聞く。 「十組でです」  真由は二年八組だ。 「友達が十組にいて、文化委員長になれそうな人を捜してるって言ったら、中学校のときに生徒会長をしてた人がいるって聞いて。誰って訊いたら、この村瀬さんって言うの。『お願いしてもいい?』って言ったら、委員長になってもいいって言うから、連れてきちゃった」 「そう。やったね」  それから由香が生徒会室の真ん中にある椅子に座らせられる。 「で、さっそくだけど、文化委員ってね、どんな仕事かというとね、」 「まだ早いだろう」  さっそく文化委員の仕事を話し始めようとする夕日先輩に、省吾先輩がつっこみを入れる。 「何が得意なの?」 「え? 特に……あ、殺人とか好きです」 「殺人?」 「ええ、ギロチンとか……」 「はぁ?」  皆いっせいにわけのわからない顔をする。  どうやらそうとうな変人のようだ。 「ギロチンというのはですね、一七三八年から一八一四年の提唱によると……」 「いや、そういう話をしているんじゃなくて……」  省吾先輩がつっこむ。 「中国では……」 「いやだから、そんな話じゃなくて……はぁ。好きなの?」 「はい。好きですがそれが何か」 「こんな人ってわかってて連れてきたの?」  夕日先輩がため息をついて真由を見る。 「いえ、ただ中学校の時に生徒会長をしてるってきいたもんですから、さぞ優秀なんだろうと思いまして……」
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