第1章

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 専門委員会でやることは、その日はそれだけだった。  放課後。 「専門委員会お疲れ様―」  省吾先輩が迎えてくれる。他にも生徒会室にいたのは、会長だけだった。 「あれ? 他の人たちは?」  夕日先輩が訊いた。 「この時期仕事がないけね。来てないよ」  省吾先輩が答える。 「おまえたちは何しよん」 「部活勧誘ポスターについて」  省吾先輩と会長は名コンビと言われている。 「へえ」  それから雑談に花が咲く。 「でですね、去年の夏に扇風機で髪を乾かしていたらですね、扇風機の後ろに髪が巻き込まれてからまちゃって、もう大変でした」  由香が話す。  皆が爆笑する。 「自分いろんな経験しとんやねー」  省吾先輩が言う。 「じゃ、反省会しようか」  頃合を見て夕日先輩が言う。  この反省会とは、専門委員会の反省会ではない。  以前から計画していた去年の文化祭の反省会のおさらいだ。  真由、由香、桐生先輩に夕日先輩が紙を配る。 「午後から使われていない教室や展示のみの教室でだらけている人が多かった」  夕日が一項目ごとに読んでいく。 「時間を定めて行う企画が同じ時間帯に重なってしまうことが多く、その時間が終わると全体に活気がなくなってしまっていた。  生徒に全員参加という意志が低い。  皆が仕事日程を把握できていなかった。  余裕を持ってもっと早くから取り組むべきだった。  歩きながらの飲食をしている人が多かった。  テーマに沿ったクラス企画が少なかった。  以上です」 「はあ。確かにそうだね」  いつのまにか省吾先輩もまじっている。 「あの、あれもまずかったんじゃないでしょうか」  おずおずと真由が切りだした。 「何が?」  夕日先輩が訊く。 「ソーラーバルーンの企画のことです」 「ああ、あれか」  皆が納得する。それもそうだ。  ソーラーバルーンを作ったのはいいものの、風に飛ばされた挙句、軍隊のレーダーに引っかかったらしく、軍隊が出動するという大騒動になったのだった。 「あれもう今年しないほうがいいね」  桐生先輩が冷静に言う。 「でも太田先生はまた挑戦したいって言ってますよ」  真由が返す。 「そうなの?」 「でもまた軍隊が出動したら大変じゃないの? 先生達ずいぶん謝ってきたみたいだよ」  省吾先輩が言う。  また爆笑。  四季高校の生徒会は、こうやって無駄話が多いのだった。  真由がふと時計を見て言う。
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