第1章

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「あ、そろそろ部活行かなきゃ」  真由が言う。 「あ、私も」  由香も言う。 「あれ? 村瀬さん何部?」 「硬式テニス部」 「あれ、私と一緒じゃん」 「そうなの? 全然気づかなかった」 「だねぇ。じゃ、一緒に行こう」  真由達は、執行部にも所属しているため多少の遅刻は許されていたのだった。  テニス場につくと、もうアップは終わっていた。  皆、コートに入って打ち始めている。 「よう、奈緒ちゃん」  増田奈緒は二年三組だ。めがねをとれば可愛いのだが。 「よう、遅かったね」  奈緒も同じ執行部だが、今は用事がないのでいない。  もっとも古株の真由と違って、先輩達ともそう親しくはないのだった。 「うん、今終わったとこ」 「あれ、由香も一緒?」 「うん、この間から生徒会役員になったから」 「そうなの? 知らなかった」 「あれ? 村瀬さんとも友達?」 「うん」 「知らなかった」  そう言って二人で笑う。  真由はムードメーカーで、いつも誰かを笑わせていた。だから、誰にでも好かれるタイプだった。 「それじゃ、練習始めようかな」  そう言って、真由はコートがあいていないので隅っこで素振りを始めた。 「自分面白いね」  そう言って真由を褒めてくれたのは、省吾先輩だった。  由香もいる。  最初の専門委員会から八日がたっていた。  その間に、一年図書館教育・応援練習、定期健康診断、月末大掃除があった。  四季高校には月末の大掃除で、大掃除コンテストというものが存在する。いかにどのクラスが綺麗に掃除したかを競うコンテストである。  四季高校は進学校なのに、こんなコンテストなるものが存在するのが凄い。  話は戻って、今日は企画書の締切日だ。  生徒会室で、文化委員が届けに来るのを待っているのだ。 「そうだよね。桜井って面白い」  桐生先輩が言った。 「あ、ありがとうございます」  照れくさそうに真由が言う。そんなところがまた可愛い。 「それにしても遅いよね」  まだ二クラスしか提出に来ていない。 「たいてい締め切り破るもんね。こっちは急いでるっていうのに」  桐生先輩が言う。 「しかし今年はまた提出率低いなー」  夕日先輩が言う。 「大丈夫ですって。ちゃんと来ますって」 「村瀬さんは慣れた?」  省吾先輩が由香に話題を振る。 「え、あ、はい、大分……」  少し顔が赤い。 「大丈夫? 自分、顔が赤いけど……」
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