1人が本棚に入れています
本棚に追加
「え? そうですか? 大丈夫ですって」
「そう? ならいいけど……。風邪だったら大変だからね」
「そ、そうですね。でも大丈夫ですから……」
コンコン。そのとき、ノックの音がした。
「はい」
「失礼します」
そう言って入ってきたのは、一人の男の子だった。省吾先輩が対応に出る。
「あの、これ……」
そう言って、一枚のプリントを差し出した。
「文化委員長」
省吾先輩が夕日先輩を呼ぶ。
どうやら文化委員の提出物らしかった。夕日先輩がドアに歩いていく。
「あ、どうも。預かっときます」
「失礼しました」
そう言って男の子は出て行った。
「企画はなんて?」
省吾が訊く。
「中国の歴史」
「まあ普通だね」
桐生先輩が言う。
「今日中に集まるかな……」
夕日先輩が呟くと、
「無理でしょ」
桐生先輩が一蹴。
「あの、いつもこんなんですか?」
真由が訊く。
「まあ、そんなとこやね。守って欲しいね、期限」
「そうですね」
結局その日は、五割しか締め切りを守ってなかった。
「今日からさ、一年の企画の分は、村瀬と桜井にやってもらうから」
夕日がそう言った。
「わかりました」
真由と由香が答える。
「でも、ちゃんとやれるかなあ」
真由が不安げに呟いた。
「やるしかない」
桐生が言い切った。
「一年は今年から劇になったんですよね」
「そう」
夕日が答える。
「ライトに机、パイプ椅子、用意しなきゃならないものはたくさんあるよ」
「はい」
真由と由香がうなずいた。
真由と由香は文化祭担当の西表先生のところに来ていた。
「先生、ライトはどうしましょう」
「演劇部のが使えないか訊いてきてくれ」
そして再び真由たちが職員室に戻ってきた。
「演劇部の人に聞いたら、あまりはないそうです」
「そうか。じゃ、四季高校にはないから他の学校から借りてくるしかないな」
「わかりました」
「どっちが行く?」
真由と由香は互いに顔を見合わせた。
目配せのあと、
「じゃ、私が行きます」
真由が言った。
由香は気が強くて、少々気の弱いところのある真由は負けてしまったのだった。
「次は、中西先生のところよ」
由香が言う。
「何で?」
「夕日先輩が言っていたでしょ。パイプ椅子と長机借りないと」
「中西先生の担当なの?」
「さっきそう西表先生が言ってたじゃない」
「そうだっけ」
頼りない真由である。
さらに職員室の置くの方へ入る。
最初のコメントを投稿しよう!