第1章

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「え? そうですか? 大丈夫ですって」 「そう? ならいいけど……。風邪だったら大変だからね」 「そ、そうですね。でも大丈夫ですから……」  コンコン。そのとき、ノックの音がした。 「はい」 「失礼します」  そう言って入ってきたのは、一人の男の子だった。省吾先輩が対応に出る。 「あの、これ……」  そう言って、一枚のプリントを差し出した。 「文化委員長」  省吾先輩が夕日先輩を呼ぶ。  どうやら文化委員の提出物らしかった。夕日先輩がドアに歩いていく。 「あ、どうも。預かっときます」 「失礼しました」  そう言って男の子は出て行った。 「企画はなんて?」  省吾が訊く。 「中国の歴史」 「まあ普通だね」  桐生先輩が言う。 「今日中に集まるかな……」  夕日先輩が呟くと、 「無理でしょ」  桐生先輩が一蹴。 「あの、いつもこんなんですか?」  真由が訊く。 「まあ、そんなとこやね。守って欲しいね、期限」 「そうですね」  結局その日は、五割しか締め切りを守ってなかった。 「今日からさ、一年の企画の分は、村瀬と桜井にやってもらうから」  夕日がそう言った。 「わかりました」  真由と由香が答える。 「でも、ちゃんとやれるかなあ」  真由が不安げに呟いた。 「やるしかない」  桐生が言い切った。 「一年は今年から劇になったんですよね」 「そう」  夕日が答える。 「ライトに机、パイプ椅子、用意しなきゃならないものはたくさんあるよ」 「はい」  真由と由香がうなずいた。  真由と由香は文化祭担当の西表先生のところに来ていた。 「先生、ライトはどうしましょう」 「演劇部のが使えないか訊いてきてくれ」  そして再び真由たちが職員室に戻ってきた。 「演劇部の人に聞いたら、あまりはないそうです」 「そうか。じゃ、四季高校にはないから他の学校から借りてくるしかないな」 「わかりました」 「どっちが行く?」  真由と由香は互いに顔を見合わせた。  目配せのあと、 「じゃ、私が行きます」  真由が言った。  由香は気が強くて、少々気の弱いところのある真由は負けてしまったのだった。 「次は、中西先生のところよ」  由香が言う。 「何で?」 「夕日先輩が言っていたでしょ。パイプ椅子と長机借りないと」 「中西先生の担当なの?」 「さっきそう西表先生が言ってたじゃない」 「そうだっけ」  頼りない真由である。  さらに職員室の置くの方へ入る。
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