第1章

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「中西先生、体育館のパイプ椅子を五十脚ほどお借りしたいんですが。それと長机を二脚」 「何に使うんだ?」 「一年生のステージ企画です」 「そうか。いいぞ」  中西先生のところを去ると、由香が言った。 「五月の二日に臨時の専門委員会開くよ」 「どうして」 「CM撮影の日程一年生に聞かないと」 「あ、そうなの」 「しっかりしてよ、生徒会先に入ったの、桜井さんでしょ」 「ごめん」  どうやら由香はいらだっているらしかった。  真由は落ち込んでいた。  確かに、由香は有能だ。中学のとき、生徒会長をしていたというのもうなずける。  それに比べて、自分はなんてバカなのだろう。全然役にたってやしない。  ただ由香につきそっているだけだ。  ふいに真由は泣きたくなった。  それをこらえて、生徒会室へ戻った。  生徒会室に戻ると省吾先輩と会長がいた。  もちろん、夕日先輩と桐生先輩はいる。 「あれ? 荒牧先輩に会長、来てたんですか」 「ああ。生徒総会の資料集作らないといけなくてね」  答えたのは省吾先輩だ。 「うわ、この時期で間に合うんですか」  真由が訊いた。 「うん。正直言ってぎりぎりだね」   省吾は苦笑した。 「夕日先輩たちは何してるんですか?」  真由が訊く。 「二年と三年の企画の準備」 「ふーん。二年生は何するんですか?」 「二年は一応なんでもありってことになってる」 「じゃ、三年は?」 「ボロコン」 「ボロコン?」  真由と由香が同時に訊く。 「ロボットコンテストだよ」 「ああ、うまーい」  真由が拍手をしながら笑った。  真由はダジャレが好きなのだ。 「でも難しそうですね。どうするんですか?」 「それが大体はわかるんだけどね。高専の人とかに訊いたらもっと詳しいことがわかるんやろうけど」 「あ、それなら大丈夫ですよ。私、高専に知り合いがいるんです」 「マジ? じゃ、頼んでくれる?」 「はい、わかりました」  真由は生徒会室の隅に置いてあるカバンから、携帯電話を取り出した。  携帯電話は持ってきてはいけないのだが、皆は目を瞑ってくれている。 「ああ、岩井くん? あのさ、頼みがあるんだけど」  しばらくして、 「先輩、高専の人が来てくれるって」 「本当か?」 「はい。詳しいことは、本人に訊いてみます」  そしてまた真由は電話をかける。 「あの、どこまでかによって来る人が変わるみたいなんです」 「ちょっと貸して」
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