5.報告から始まるケジメ

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「託実、お疲れ様」 「ただいま、百花は調子はどう?」 「もう少ししたら退院出来るかもしれないって  今日、裕真先生が言ってた。  五月に比べると大分痛みもなくなってきてるし」 「そっか……。  順調に回復してるなら安心だな」 「今日も少し前まで唯香と雪貴くん来てくれてたんだよ」 「雪貴と唯ちゃんは、マンションのスタジオでのAnsyalの練習時に  会うな」 「Ansyal、練習してるんだ」 「練習って言うか、出来る奴から順番に集まってるって感じかな」 「私も……行ってみたいな……」 「退院したら連れてってやるよ。  んじゃ、俺明日……大切な日だから」 「大切な日?」 「百花の家族に、正式に挨拶に行って来る。  喜多川家の本宅で、10時に約束してる」 「……託実……」 百花は俺の名前だけ読んで、 そのまま俯く。 俯いた先に視線を向けると、ポロリと零れ落ちて染みをつくる涙。 その涙を指先で拭ってやると、アイツの暖かい涙が指先に雫を作る。 「大丈夫。  プロボーズした時からちゃんと考えてたんだ。  けど百花の家も、俺の家もその辺りは厳しそうだろ。  手順はしっかりと踏んでいく。  それは俺自身ケジメかな。  明日は来れないかも知れないから」 百花をギュっと抱きしめて、俺は病室を後にした。 向かうのは実家。 実家でノーパソを開いて、仕事の続きをした後 3時間ほど仮眠をとってその日を迎えた。 スーツに着替えて、リビングに顔を出したら すでに親父やおふくろも準備を整え始めていた。
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