第11話 【新しい生活】

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なっ、恥ずかしい奴ぅ!? 私は彼に目を向け肩を引き、眉間に深いしわを刻む。 「さ~てとっ、麻弥と遊んだし帰るとするか」 私の睨みを無視して、いや、それどころか満足気な笑みを浮かべて彼は立ち上がる。 「そうそう、とっとと帰りなさい。…お母さんは?待ってるんでしょ?」 「親戚のおっさんがここに入院してるから、ついでに見舞いに行ってる。3時には戻って来いって言われてるからそろそろ戻る。…また、遊びに来るから」 視線を廊下に向けたまま、語尾だけ小声で呟く様に言って、海斗くんはウインドブレーカーのポケットに両手を突っ込んだ。 その横顔が、何だかちょっと大人びて見える。 閉鎖された、このコンクリートの囲いの中から飛び立った鳥の羽ばたきを見た気がして、自然と笑みが零れた。 本当は『うん、また会いに来てね』と、言いたいけれど… 「病院は遊びに来るところじゃないのよ。こんな所に遊びに来る暇があったら、勉強を頑張りなさいっ」 また反撃が来ることを分かっていながらも、敢えて意地悪気に言ってやった。 「うっせーなー!麻弥なんかに言われなくても、分かってるよ!」 …ほらね。 「また麻弥のしけたツラ見に来るからな~」 最後まで憎まれ口を叩いた海斗くんは、両手をポケットに突っ込んだまま体を揺らして病棟を去って行く。 しけた面って…ったく、生意気な言葉ばっかり。どこで覚えて来るんだか。 「もう、戻って来ちゃ駄目よ。病院なんかに遊びに来る暇があったら、いっぱい友達を作って、思いっきり遊ばなきゃ」 小さな背中が消えて行くのを見届けて、私は穏やかな気持ちでそう呟いた。
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