第11話 【新しい生活】

10/30
前へ
/30ページ
次へ
先生は私を見つめ、諦めたように小さな息を吐く。 「それもそうだな。余計な事を言って悪かった。休日の日当直の時に麻弥に頼みたい事が有るかもしれない。もし家政婦を続ける決断をした時に、バイトをどうするか考えてくれ。…その、頼りがいあるボディーガード君に相談して」 彼は淡々と言葉を連ね、私に視線を落とした。 「はい、そうさせて…」―――頂きます。と、言葉を返そうとした瞬間、グイッとエプロンの端を引っ張られ、その方向に顔を向けた。 「まーや、ほーくえん、いく?」 険悪な雰囲気を感じ取ったのかどうかは定かではないが、咲菜ちゃんが私のエプロンを小さな手で掴みながら、きょとんとして首を傾げている。 「え?…っと、私は保育園には行けないよ。パパが連れてってくれる……ってっ!今何時だっけっ!」 血相を変え、慌てて掛け時計を見る。――7時5分。 「うわーっ!もうこんな時間!あと10分で出なきゃ!咲菜ちゃん、髪の毛だけ結ってあげるからおいでっ」 しまった!呑気にサディストと言い合いしてる時間なんて無かったっ! 私は咲菜ちゃんの手を取って、急いで洗面室へ走り出した。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1754人が本棚に入れています
本棚に追加