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先生は私を見つめ、諦めたように小さな息を吐く。
「それもそうだな。余計な事を言って悪かった。休日の日当直の時に麻弥に頼みたい事が有るかもしれない。もし家政婦を続ける決断をした時に、バイトをどうするか考えてくれ。…その、頼りがいあるボディーガード君に相談して」
彼は淡々と言葉を連ね、私に視線を落とした。
「はい、そうさせて…」―――頂きます。と、言葉を返そうとした瞬間、グイッとエプロンの端を引っ張られ、その方向に顔を向けた。
「まーや、ほーくえん、いく?」
険悪な雰囲気を感じ取ったのかどうかは定かではないが、咲菜ちゃんが私のエプロンを小さな手で掴みながら、きょとんとして首を傾げている。
「え?…っと、私は保育園には行けないよ。パパが連れてってくれる……ってっ!今何時だっけっ!」
血相を変え、慌てて掛け時計を見る。――7時5分。
「うわーっ!もうこんな時間!あと10分で出なきゃ!咲菜ちゃん、髪の毛だけ結ってあげるからおいでっ」
しまった!呑気にサディストと言い合いしてる時間なんて無かったっ!
私は咲菜ちゃんの手を取って、急いで洗面室へ走り出した。
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