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「…ん?」
「いえっ、何でも無いです。えっとですね、ずっと欲しかったものはお金だったので、『物は?』と具体的に聞かれると全然浮かんでこなくて…」
「お金って…そう言えばそうだったな。それもまたストレートで気持ちいいが、クリスマスプレゼントとしては色気ゼロだな」
戸惑う私を見て、先生が目を細めてククッと笑う。
色気ゼロって……はい、おっしゃる通りで。
自分でも分かってはいるものの―――
「…色気が無いって、最近言われっぱなしです。勿論、今はお金にそこまでの執着心はありませんが…」
肉体においてもこんな乏しい私だけれど、ほんの少しでもセックスアピールを感じ取って頂きたい相手に言われてしまうと...流石に凹むんです。
心の内に深いため息をついて、肩を落とし苦笑いを浮かべた。
「最近言われっぱなし?色気が無いなんて、他に誰に言われたんだ?」
えっ?…
「…っと、いつも一緒にバイトしてる人です。深津さんって言うんですけど。あっ、この前先生がビールくれた日にもレジに居た人です」
「…ああ、あのデカくてごつい感じの男か」
デカくてごついってあなた…まあ、確かにそうだけど。
「深津さんは学生時代にラグビーをしていたので、筋肉質で体格がイイんです。コンビニは夜間女性だけで働いてはいけないので、彼は私のバイト仲間兼ボディーガードみたいなものです」
私はさらりと笑顔で言って、それぞれが食べ終わった食器を集め始める。
「ふ~ん…、麻弥のボディーガードねぇ…。で?いつ辞めるんだ?バイト」
先生は椅子にもたれ掛り、咲菜ちゃんが口の周りに付いたヨーグルトを、自分で一生懸命に拭き取ろうとする仕草を見守りながら言った。
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