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「いつ辞めるんだって…コンビニをですか?」
突然投げられた想定外の言葉に驚いて、私は目をぱちくりとさせる。
「もう慰謝料の返済は終えたんだ。休日まで馬鹿みたいに安い時給で働く必要も無いだろ」
咲菜ちゃんが口の周りを上手に拭き終えたのを見届けた後、先生はどこと無く冷たい口調でそう言って、席を立った。
「またバイトを貶すみたいな言い方して…馬鹿みたいだけ余分です。って言うか、先生はいつも一言が余分なんですよっ!」
真っ黒な寝衣に包まれた彼を見上げ、フンっと勝気に鼻を鳴らした。
「俺は間違った事は言って無い。病院の給料以上の金が欲しいなら、休日もここで稼いだらいい。その方が、効率も良いだろ」
私の反抗的な態度が気に食わないのか…素っ気ない言い方をする彼。
「お金の問題じゃなくて。そんな事を急に言われても…既に来月までシフトが組まれてるし、休日の夜間働く人を見つけるの簡単じゃないだろうし…いきなり私が辞めたら深津さんにも迷惑かけちゃうし…」
不覚にも彼の冷たい雰囲気に押され、しどろもどろに言葉を並べる私。
「たかがバイトだろ?そんな代わりなんていくらでも見つかる。自分が居なくなると現場が困ると思いがちだが、蓋を開けると自分が考えてるほど周囲は必要としていないのが、世の常だ」
「なっ!?」
なんて失礼なっ!
確かにそうかも知れない。いや、悔しいが、おそらくその世の常が当てはまるであろう、私の立場。
だからって、ずけずけと言いやがって~っ!この、サディストめっ!!
「直ぐに私を怒らせるような事を言って…何がそんなに気に食わないんです?バイトを今後どうするかは、パートナーの深津さんと店長に相談して決めます。それに、お試しの一週間を終えて私がどうするかは、まだ分からないんですから。先生もさっきそうおっしゃいましたよね?」
売り言葉に買い言葉。私は先生を見つめて、小憎らしさ満載にニッコリと笑って見せた。
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