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「そういえば……」
思い出したかのように美少女が麻妃に視線を落とす。いたの? みたいな目で見られても困るんですが。
「おまえ、誰?」
「今更!?」
結局わけがわからないまま流されて巻き込まれて、だからといって職員室に案内してくれることもなく。麻妃は一人広い校内を探索しながら、ようやく職員室に辿り着いたのだった。
唯一さっきの女子生徒二人からわかったことは、今日は朝のホームルームがなく、朝から新入生交流行事が行われるということ。ゆえに体操服に着替えていたとのことだった。
ならば、尚更急がねばならない。自分のクラスすらわからない状態じゃ先にも進めないわけで。
「おまえか、起田麻妃。なかなか来ないから心配してたんだぞ。一応連絡はしてたんだが」
「あはは、すいません。知らない番号には出ないようにしてるもんで」
職員室で案内された先にいたのは見るからに優男な感じの人だった。怒るどころか心配してくれていた辺り好印象である。
「改めまして、俺は担任の保苅恭。起田はうちのクラス、一年三組だ。一年間よろしくな。ではさっそくだが急ぐぞ」
担任は鍵が厳重にかけられた引き出しからICカードのようなものを取り出して見せる。
「先生、それは?」
「ん。これはこれから過ごす家の鍵にもなるキーカードだ。そして……」
特殊な機械にカードを翳し、担任のみが所持している暗唱番号を入力するとそこから立体ホログラムとして女子生徒の姿が表示される。
「先生、これはもしかして……!」
「ん、察しの通りだ。3日遅れだが、今日からおまえの、えっと、妹になる小野深夜。同じクラスだからすぐ会うことは出来るだろう。今後一緒に生活を共にするわけだが、ちゃんと互いに協力しあ……て、おい起田、ちゃんと話聞いてるか?」
麻妃は目の前に現れた女子生徒に釘付けになっていた。今まで欲しかったおもちゃを手に入れた子供のようなキラキラと輝く純粋な目つきをして、その立体ホログラムから目が離せずにいる。
「これが俺の……」
同じ高校一年生とは思えないほどコンパクトな身なりをしている。顔も幼いし体も幼い。さっき会った二人の女子生徒と比べたら残念なことに子供にしか思えないような容姿をしていた。それでも秀でた可愛らしさは損なわれておらず、可愛い系に分類すれば上位ランク間違いなしだ。
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