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大学からの帰り道、私は駅から自宅へと続く道を歩く。私の家は、裏通りとも言えるようなところにあるので、当然のごとく人気は少ない。
そして今は夕暮れ時、段々と赤さが失われて藍色の空が広がていく。
辺りは仄暗く、まばらについている街灯が私に薄気味悪さを感じさせる。
ふと腕時計に目をやると、時刻はちょうど18時。
普段なら、なんとも思わないのだが今日はなんだか寒気がするほどに気味が悪い。
その薄気味悪さから逃げるために、私は家へと駆け出す。
まるで何かから逃げかえるかのように……
裏通りとはいえ、駅から徒歩十分くらいの距離にある私の家。走れば数分でたどり着く道のりのはずだった。
そう、はずだった。
だけど、走っても、走っても、家にたどり着ける気が全然しない。
「おかしい。。なんで家が見えてこないの」
もう見えてもいい頃だ。
いや、もう通り過ぎた位の距離を走っているかもしれない。
私はあきらめて立ち止まり、荒れた呼吸を整え歩き始める。
少し、吐き気がする。私は、運動不足の自分の体にいらだった。
「帰ったら、どこかいいジムでも探そう。」
本気でそう思った。
数メートル進んだあたりで、後ろに気配を感じた。私は勢いよく振り返る。
だけど、そこには誰もいなかった。
再び前を振りむくと、自分の家が数十メートル先に見えるところまで来ていた。ホッと胸をなでおろす。
きっと恐怖のあまり時間の感覚が鈍っていたんだなと自分に言い聞かせる。
足早に家へ向かう。
だけど家の前には、見知らぬ人が立っていてこっちに振り向いていた。
薄暗くよくは見えなかったけど、男の人のように見える。
「お嬢さん、黄昏時には気をつけることです。よくないものに出会いますよ。」
そう男は言った。
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