たそかれ

3/3
前へ
/3ページ
次へ
その時ちょうど、月明かりが男を照らす。 男のその顔は、まるで能面、わかりやすく言えば、ピエロの仮面でも付けているかのような顔だった 男はにやりと笑い振り返り、そして暗闇の中へと消えていく。 私は、背筋に寒気が走り、反射的に家に駆け込んでいた。体中にいやな汗がまとわりつく。 とても気持ち悪い。すぐさま、バスルームへと向かった。 あとでおじいちゃんに聞いた話では、私がいつも歩いていた道。 そこは、空襲で焼け野原になった場所だった。 たくさんの人が焼け死んだ場所。 私があった彼は、そう言った類いのものなのだろう。 彼は、私に忠告していたから、悪いものではないとも思えるけど、良いものとも言い切れない。 まさしく、闇の中って感じ。 そうそう、その時におじいちゃんがこんなこと言ってたな。 「あの道を通る時は、黄昏時には特に気をつけることだよ。黄昏時は、誰(た)そ彼(かれ)時。誰ぞ彼時、人とも人じゃないものとの見分けがつかない時分のこと。逢魔時とも言うね。何も見えないときには、大変なものに出会うかもしれないよ」 おじいちゃんは、優しく教えてくれたけど、どこかさびしそうな目をしていた。昔の思い出したくないことを思い出したのかもしれない。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加