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その時ちょうど、月明かりが男を照らす。
男のその顔は、まるで能面、わかりやすく言えば、ピエロの仮面でも付けているかのような顔だった
男はにやりと笑い振り返り、そして暗闇の中へと消えていく。
私は、背筋に寒気が走り、反射的に家に駆け込んでいた。体中にいやな汗がまとわりつく。
とても気持ち悪い。すぐさま、バスルームへと向かった。
あとでおじいちゃんに聞いた話では、私がいつも歩いていた道。
そこは、空襲で焼け野原になった場所だった。
たくさんの人が焼け死んだ場所。
私があった彼は、そう言った類いのものなのだろう。
彼は、私に忠告していたから、悪いものではないとも思えるけど、良いものとも言い切れない。
まさしく、闇の中って感じ。
そうそう、その時におじいちゃんがこんなこと言ってたな。
「あの道を通る時は、黄昏時には特に気をつけることだよ。黄昏時は、誰(た)そ彼(かれ)時。誰ぞ彼時、人とも人じゃないものとの見分けがつかない時分のこと。逢魔時とも言うね。何も見えないときには、大変なものに出会うかもしれないよ」
おじいちゃんは、優しく教えてくれたけど、どこかさびしそうな目をしていた。昔の思い出したくないことを思い出したのかもしれない。
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