第1章

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うちの近所には小さな山があった。 子供たちにとっては格好の遊び場だ。 僕も毎日のように遊びに行っていた。 小学一年生のある日、山の中腹の階段で転んでしまった。 「うわ!ゆうや大丈夫か?」 友達が集まってきた。 「これくらい平気だよ。」 そう強がってみたけど、ひざから流れる血がこわい。 「これ使うか?」 そう言ってくしゃくしゃの絆創膏を差し出してくれた人がいた。 「うん。」 そういって受け取ると、早速絆創膏を貼った。 すぐに絆創膏に血がにじみ、ガーゼの部分が真っ赤になった。 それでも、絆創膏を貼ったという安心感からか、立ち上がり、 「もう平気。」 そういってその人を見た。 名札を見ると6年生。 『杉崎斗哉』 と書いてあった。 そのころの僕には読めるわけがない。 「名前なんていうの?」 「ん?とーや。」 「僕ゆうや!似てるね!」 子供のころなんて、それだけでいい。 それだけで仲良くなれる。 それから僕は、毎日のようにとーやを追いかけまわした。
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