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うちの近所には小さな山があった。
子供たちにとっては格好の遊び場だ。
僕も毎日のように遊びに行っていた。
小学一年生のある日、山の中腹の階段で転んでしまった。
「うわ!ゆうや大丈夫か?」
友達が集まってきた。
「これくらい平気だよ。」
そう強がってみたけど、ひざから流れる血がこわい。
「これ使うか?」
そう言ってくしゃくしゃの絆創膏を差し出してくれた人がいた。
「うん。」
そういって受け取ると、早速絆創膏を貼った。
すぐに絆創膏に血がにじみ、ガーゼの部分が真っ赤になった。
それでも、絆創膏を貼ったという安心感からか、立ち上がり、
「もう平気。」
そういってその人を見た。
名札を見ると6年生。
『杉崎斗哉』
と書いてあった。
そのころの僕には読めるわけがない。
「名前なんていうの?」
「ん?とーや。」
「僕ゆうや!似てるね!」
子供のころなんて、それだけでいい。
それだけで仲良くなれる。
それから僕は、毎日のようにとーやを追いかけまわした。
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