第3章

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あいまいなまま逃げられて、釈然としなかった。 いったいなんだったんだ? とーやと会ったのは10年ぶりくらいだ。 飲みに行ったのだって、はじめてだ。 それなのに、その夜にキスされるって。 ふと周りを見渡してみたら、こちらに背を向け、ソファで横になっている牧瀬さんがいた。 とーやにかけたはずの羽毛布団をかけていた。 寝ているのかな?と思いこっそり近づいて、顔を覗き込んでみたが、やはり完璧なイケメンのままスースーと寝ていた。 どうしても納得がいかず、とーやが風呂場から出てくるのを待とうと決めた。 ソファのそばにテーブルの前に座り毛布をかぶっておとなしくしていた。 絶対に起きていようと心に決めていたのに、牧瀬さんの寝息を静かに聞いていたら、何だかやけに眠くなってしまった。 結局睡魔には勝てず僕はそのまま眠りについたようだ。 なぜなら、朝起きるとベッドの上だったからだ。 きっと、風呂場から出たとーやが運んでくれたんだろう。 それでも、僕はお礼を言う気にはなれなかった。
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