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母親が一礼して、階下へ降り始めた時に、
「待っちょって下さーーーい!」
真弓はその母親を呼び止めた。
「なにか……?」
母親は驚いて振り向いて、脚を止めた。
「失礼じゃけんど、
あたし、あなたとお会いしたことがありますか?」
えっ、母親は口を半開きにしながら、踊り場に上がって来て、
じぃっと真弓の顔を見つめていた……が、
「いいえ、
あなたのお顔は初めて拝見致しますけども……」
と言い、二人して、
しばらくは睨み合う形になってしまった。
真弓は更に踏み込み、首を傾げて睨み続けた。
母親は上体を反らしながら、その様子を見守るのだった。
「ごめんなさいじゃ。
あたしの勘違いのようじゃったね。
失礼をば致しましたちぃ」
と、真弓は丁寧に頭を下げて、母親とは別れた。
あの人とは……
絶対どこかで会っちょるちぃ……
真弓は思いっ切り首を傾げながら、K出版社のドアを開いた。
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