四純と裕神(よんじゅんとゆうじん)

3/10

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
´ 「四純、そんなに自分を責めないで、別れ辛くなるわ」  四純は、ハッとして顔を挙げると優しく頷いた。 「そうだね裕神……。 いつも僕がそうやって……君の重みになっていたんだね……。 僕はそれに気付かなくて自分のことばかりで……。 済まなかったね……裕神」 「もぅいいのょ、四純」  四純の気持ちは分かるものの、 裕神はいつものように少しづつ苛立を覚えはじめてきた。  実は裕神は、この後に彼氏に逢う約束をしているのだった。 「ねぇ四純、いつまでもこうしていても。 ねぇ私たち、 もぅすぐ他人になるんだから、ここ出ようょ、ねっ」 「あぁ……また気がつかなくて……。 裕神、最後に僕たち、……乾杯でもして別れないかぃ……。 僕は……それにふさわしいお店を知っているんだ」 (四純、乾杯なんてどうだっていいよ。 もぉう四純、 あなたは、なぜ私が別れようとしているのかさえも、 まだ分かってないんでしょう。 四純、私たちはね、 今、たいした理由もなく別れようとしてるのょ。 私はねぇ四純、 あなたといると、何故だかとても苛々して来るのよ。 それが別れる、私のたった一つの最大の理由なのよ! ぁあ、浩{ひろし=元カレ→今カレ}が待ってるのよね) 「ねぇ四純、 私これから、どうしても行かなければならない用事があるの。 だから、ねぇ分かって」 「裕神…… 悪いけど……実はもぅ昨日から予約してあるんだ。 たぶん……こんなことだろうと思って……。 ほら向かいの……あのお店なんだ……。 一時間くらいだったら……構わないよね、裕神……。 僕たちはもぅ逢えないのだから……」 「…………」 (四純、私はいつも思ってたんだけど、 あんたって人は、 ほんとうに気が利いてて間が抜けてる典型人、その人なんだよね) 「そうだね四純、 私たちはもぅ最後なんだし、一時間くらいだったら」 (ぁあ、またうまく乗せられてしまったわ)      ▼ ´
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加