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食事をする気分も失せ、自室に戻ろうと廊下を歩いていると、俺の専属使用人の島津に会い詳しい話を聞かせてもらうことにした。
詳しくと言っても時間と場所を聞くだけだ。
部屋に戻り、後ろから入ってきた島津へ背を向けたまま『何時に決まった?』と、訪ねる。
「はい。二月一日、午前十時より料亭さくらでの会食を予定しております。お忘れになりませんように」
忘れていても、お前が思いださせるのだろう。と心で愚痴りながら、いちいち念を押してくる島津の態度が癪にさわる。
俺は、この生田家で産声をあげた時から人生は決まったようなものだった。
夢も希望もこの生田家に捧げる事こそが俺の人生。
逃げる術は無い。
そう。どこにも……
一生伝える事はないだろう。
俺は……
――――――島津が……好きだ
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