第1章

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2、ネデナ学園  指示された通り一際大きな建物に入ると、壮大な造りの玄関で白衣姿の女性が待ち構えていた。白衣姿なのもそうだが、その若々しさと美貌でどうしても教師には見えない。 「ネデナ学園にようこそ。二人の名前は?」 「結坂咲希と尚人です」  咲希が答えると、その人は楽しそうに、無邪気な笑みを浮かべた。 「ああ、双子の結坂さんね。私は保健医の叶彩花よ! このパンフレットを持って、二階の視聴覚室に行ってね」  パンフレットはオールカラー十数ページにも及んだ。パンフレットをぱらぱらめくりながら二階へ上がり、そのまま標識の矢印の通りに進む。  この校舎、外観は西洋の城のようだったが、中は近代的な造りなっている。歩く度にコツコツ音が鳴る床には大理石が敷き詰められていて、壁はどこまでも白。天井は高く中央は吹き抜けになっていて、廊下は学校とは思えないくらい広い。これで店舗があったらどこかの巨大なショッピングモールのようだ。  そんな広い校内に人一人いないのは不気味で、心地が悪い。 「ここだな」  やっと辿りついた【視聴覚室】のプレートがかかった部屋は、二階の中ほどに位置していた。尚人が乱暴に扉を開けると、バンッと予想外に大きな音して、何人かの視線が集中する。 「ちょっと尚人!」 「悪い……」  ほんの少しだけ兄弟であることを呪いながら、二人並んで中に入った。  視聴覚室は思っていたよりずっと狭かった。静かすぎる廊下では想像もできなかったが、百人近い生徒で席はほとんど埋まっている。  結局、咲希は最前列、尚人は最後列の席に分かれて腰かけた。
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