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翌朝、咲希は生まれて初めての制服に身を包んだ。
オレンジと黄色のチェックのスカートに、同じ柄のリボンが特徴的な可愛らしい制服。まだ肌寒いため、上に真っ白なブレザーを着用する。漆黒の前髪をヘアピンでとめ、最後にペンダントを制服の下につければ準備は完了。
咲希は最後にぐるっと部屋を見回した。家にいる大半の時間を過ごしてきたこの部屋も、今日で見おさめだ。五畳の小さな部屋でも思い出はたくさんある。
以前は姉が寝ていた上の段、一番上の兄が組み立ててくれた少し不格好な本棚、幼い頃兄弟と遊んだサッカーボール。一つ一つが大切で、学園への入学が決まって初めて寂しさを感じた。
後ろ髪を引かれながら一階に下りると、そこには慌ただしく歩き回る母の姿があった。
「咲希、用意はちゃんと終わっているのよね? 後から送るなんて無理なんだから」
「うん、持っていくのは着替えぐらいだからね」
「そう。尚人にはこれ渡してあげないと。それでもう一回荷物を見なおしてくるわ。あ、もう少しお菓子を持っていかせた方がいいと思う?」
奈津実は持病の心配性が出たようで、真新しいスニーカーにレジャーシート、とっておきのジャケットなど統一性のない荷物を腕いっぱいに抱えている。既に海外旅行用のトランクにぎっしり詰め込んでいるのに、どこに入れる気なんだろう。
咲希は表情が引きつりそうになるのを、何とか抑えた。
「お腹をすかせたら可愛そうだから……。やっぱりもう少しお菓子とお小遣い渡しておきましょうか。咲希、急いで買ってきて」
「心配し過ぎだよ。お小遣いは学園から出るんでしょう?」
「でも……」
なかなか納得してくれない母に思わずため息が漏れそうになる。昔からこうだ。家に余分なお金はないというのに、尚人と末っ子の心菜にだけはこうやって何かしら、不必要なお金を使おうとする。
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