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日を跨いだ翌日の朝。
俺は、まだ見慣れない新しい二年生の教室に登校していた。
教室に入るとすでに席につき不機嫌そうに携帯とにらっめこする小間井の姿が目に入る。
昨日の「小間井はブラコン」という言葉が頭の中で乱舞する。
いや待て。仕方ないじゃないか。
昨日の今日だよ、彼女のイメージがそんな失礼な言葉で塗り固めらそうになってても仕方ないじゃないか。
こんな俺を誰が責められる?
なんて、またそんな自己庇護をしつつ自分の席に鞄を置く。
ここで小間井に「『君ブラコンなんだって?』と質問したらどうなるのか?」 という好奇心が俺に少しでもあれば出会いの幅が広がるのかもしれないが、あいにくそんな度胸は俺には無いわけで。
でもまあ、そんな質問じゃなくても当たり障りのない日常会話をするくらいなら普段は問題ないのだが。
何せ相手が基本無視を心情にしているらしい彼女だ。俺もむやみやたらに傷つきたくはない。
さわらぬ神に祟りなし。
おぉ、くわばら、くわばら。
「……うぃーす」
そんな馬鹿みたいなことを考えながら時間をつぶしていると蕗辻が元気なく俺の席にやってくる。
「その様子だとノート無くしたみたいだな」
「ノートなら生徒指導の小場が持ってるよ。誰かが拾ってわざわざ届けたらしい」
「取りにいかないのか?」
すると声を細め周りをうかがい始める蕗辻。
「取りに行けるわけねぇだろ。あれの持ち主だとばれたら下手したら停学になるかもしれないんだぞ」
どうやら秘蔵のノートとやらは、俺の想像を超える極秘内容らしい。
そんなノートの内容を俺に開示しようとしたのかこいつは。
なんて恐ろしい。そしてなんて恐れ知らず。
「はぁ、ほんとついてないぜ。おまけに凛さんの結婚なんていうニュースまで聞かされたんだ。どうやってテンション上げろっていうんだよ」
「やっぱりショックなのか?」
「ショックに決まってるだろ。凛さんは、何歳も年下の俺たちと遊んでくれてた優しい憧れの人なんだよ。言っとくが俺たちと遊んだことのあるやつらの初恋の相手と言ったら、たいてい凛さんなんだぞ」
まあ凛姉は、頭はいいけどあれで子供っぽいところがあったからな。当時の俺らと波長が一緒だったんだろうな。
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