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突然の出来事に俺の頭の中では、「小間井はブラコン」ということなどなりを潜め、ただ話しかけられたというその一点に満たされていた。
「今さっきなんて言った?」
同じ言葉を繰り返す小間井。
そんな質問なのだ。
俺は、先ほどまで話していた内容の中で小間井が反応を示したであろう言葉を模索する。
こいつまさか……。蕗辻の秘蔵ノートを狙ってるんじゃ。
そ、そんなことさせるものか!!
「俺の姉ちゃんの名前がどうかしたのか?」
「名前!! さっきなんて言った!!」
ですよねぇ。
別にあいつの秘蔵ノートとかどうでもいいし。
あのタイミングだったんだ、凛姉のことだってわかってるさ。
「あんた今『薄野凛』って言わなかった!? あんたの名前ウスノじゃないの!?」
「俺の名前は、『薄野(すすきの)禄郎(ろくろう)』ですが……」
それがなにか?
と言おうとするが小間井は、俺の襟をつかんだまま強引に立ち上がり俺にペースを握らせない。
「ちょっと来て!!」
「いやちょっと待っ……」
ついには来ない俺のターン。
身長差があるにもかかわらず襟をつかまれている俺は、必然的に引きずられている形になってしまう。
うむ、何とも惨めだ。
連れ去られる間際、蕗辻に目線を向ける。が、蕗辻は、真新しいノートに必死にペンを走らせている。
俺の視線に気づくと親指を立て満面の笑みを溢した。
どうやら俺も奴の悪趣味な目録の一部に選ばれたらしい。
生徒指導室はどこだったかと思いつつ俺は、小間井に連れられ教室を後にしたのだった、まる。
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