いや、だから無いって

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 よし。  では、今度はこんな場面を想定してみよう。    先ほどと同条件で人物だけをおば様から美少女に変換して考えてみる。  さあこの場合どのように答えるのが正解か?  「急いでるので」?  ありえない、ありえない。  ナンセンスだ。  美少女を優先しないなんて、神様を信じないと同じくらいに罰当たりだ。そんな事言う奴の神経がしれない。  ここは、洒落たジョークでも飛ばしながら師について語り合う。  それ以外の選択はありえない。    可愛いは正義。  そして俺は、正義の味方だ。  さてさて、そこを踏まえた上で再びリアルに目を向けてみよう。  人生とは、なんなのか?    Why? なぜ?  実に面白い質問をするじゃないか。  哲学というか理念というのかそんなバックボーンについて口にする女子(しかも美少女。ここ大事)。  深窓の令嬢ここにありだ。  だが一つ疑問がある。  彼女が誰に対してその質問を投げかけているのか? という疑問だ。    お隣さん? 後ろの人? 前方の俺?  幽霊に話しかけてるなんてのは、できれば勘弁して欲しい。  違うとしたらつまりは、独り言だということになる。    しかし待て。  こうも考えることができるのではないか?  もしも彼女が引っ込み思案だったとしよう。  そうだとするならあの一言は、彼女なりのコミュニケーションかもしれない。  勇気を振り絞った一言を今俺たちは、聞き流そうとしてるかもしれないのだ。  おいおい。  そう考えるともう、そうとしか考えられなくなってきたではないか。  俺よ。それでいいのか?  ここは、華麗に彼女の言葉を拾い上げキャッチボールに誘うべきではないのか? 「面白いこと言いますね」と一言ボールを投げてやるべきではないか?  男を上げろ、俺。 「人生……。それは、君自身のことじゃないか? 人に聞くもんじゃなく自分で見つける物だと俺は思うけどね」
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