最後の戦い

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私はしばらく放心状態でそこに座っていた。 来た時は確かお昼前だったのに、いつの間にか日も暮れている。 まだ夏の名残があるとはいえ、気温も徐々に下がってきている。 「忘れないんだから……」 不思議と、涙はもうあふれなかった。 ただ胸のなかだけが狭い箱に無理やり押し込められたみたいな苦しさを訴えていた。 どんなにつらくても悲しくてもおなかは減るらしく、それが情けなくて、笑える場面じゃないのに笑えてくる。 家に帰ろう、帰らなくてはいけないと、重たい足に力を入れて立ち上がる。 すると木陰から、ずっと待ち構えていたみたいにごく自然に、人影が現れた。 まだ顔ははっきりと見て取れる時間。 その人物の顔を見ても、私は目の前で起きている出来事が現実だと信じられなかった。 「ジンさん……どうして?」 彼はにっこりと微笑んでから答えた。 「時空警察になって、この時空間への配属が決まったんだ。もうずっと、ここにいられるよ」 「そんなに都合のいいことがあっていいんですか?」 ジンはちょっと笑って付け足す。 「成績トップで通過すると、色々と融通が効くんだ。前に実地体験していたのもあって、割とスムーズに赴任が決まったよ。実はこの時空間に、電磁波の悪用や、悪質なホームページを根城にした模倣犯が現れそうな気配があってね」
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