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_ずっと会いたかった。もう二度と会えないと思ってた。
大一の抱擁はこれまでで一番力強く、息が止まるかと思ったほどだ。
_俺、後悔してるんだ。しーちゃんを手放してしまった事。
強気で気ままな彼が初めて見せた弱音。
でも、私は極めて冷静だった。今さら、もう遅い。遅すぎる、と。
_もっと早く聞きたかった、その言葉。
私の答えに、彼は悲しそうに微笑んだ。
_また、会ってくれる?
私は静かに首を横に振った。
私はこの時も自分の決断に驚いたものだ。大一を拒絶することのできた自分に。
そして、気づいた。大一は昔と変わっていない。でも、私は変わったのだと。
_俺のこと、もう好きじゃない?
_好き。でも、大一の帰る場所は、もう私じゃない。
彼は、驚いたように目を見開くと、切なげに唇を噛み締め、それから黙ってしまった。
大一はかつて、心から愛した人だ。今でも好きだと思う。
けれど、私は彼を迎えてはやれない。だって、私には帰る家があるのだから。例え居心地がよくなかったとしても、私が築き上げた家が。
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