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「五年ぶりかな」
大一の手からバスタオルを受け取ると、私は自身を守るように胸に抱いた。高鳴る鼓動が、大一の耳へ届くのは避けたかった。
「インドから帰ってから、また店をやってるんだ。Hennaって名前のバー。昼間はメヘンディーアートの店にもなる」
「知ってる。噂は聞いてたから」
私の答えに、大一はため息をついた。
「知ってるのに、訪ねてこないってことは、それがしーちゃんの答えってことだな」
苦笑いを浮かべる大一に、
「行く理由がないもの」
私はわざとそっけなく答えた。
「そっか」
大一は笑い、タバコに火をつけた。
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