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行く理由がないなんて、嘘だった。
何度行こうかと思ったかわからない。
大一が日本に戻って来ていると聞くたびに、心が揺れた。
会いたかった。
会いたくてたまらなかった。
でも、私はそんな自分の心にいつもブレーキをかけたのだ。
「でもまぁ、まさかこんな所で会うなんて、やっぱり俺たちはそういう運命なんだろうな」
沈黙に耐えられなくなったのか、彼はそんなことを言った。決して重くならないように務めて軽く。さりげなく。
運命…。
私は、濡れた唇の中でその言葉を飴玉のように転がした。
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