第1章

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「7歳のお誕生日おめでとう」 昨夜の夢に出てきた女性と見知らぬ男性に言われると、私は目の前のテーブルにあるバースデーケーキの蝋燭を吹き消した。 女性が明かりをつけると男性がクラッカーを鳴らした。昨夜の夢と同様に、女性と男性の顔は黒く塗り潰されていた。 私は女性と男性と同じテーブルに座っていた。 どこかのリビングのようだったけど、見覚えがなかった。 でも、とても懐かしいと思った。 「はい、どうぞ。ゆっくり食べてね」 そう言って女性が差し出したのは、一人分に切り分けられたバースデーケーキだった。 皿の上には、茶色いチョコレートケーキと、「おたんじょうびおめでとう」の文字、私の名前が書かれたプレートがのっていた。 私はフォークでケーキの先を小さく切ると、一口食べた。 そして、ケーキを食べるのを見守っていた2人に向かって、私は笑顔で言った。 「とってもおいしいね。パパ、ママ」
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