第1章

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「雲行きが怪しくなってきたなぁ」 私はボソッと呟くと洗濯物を取り込むため放っていた本を本棚に戻し、二階のベランダに行こうとした。一段目に足をかけた時、上から降りてきた男性がいた。 泥棒かと一瞬身構えたが、この時間に二人分の洗濯物を抱えて降りてくる男性がいるとしたら、私が知る人の中には一人しかいない。 「父さん。帰っていたなら一言何か言ってよ」 「いや、悪いね。寝ているのかと思って家に入ってすぐにベランダに行ったんだよ」 私は父から洗濯物を半分受け取ると、居間に向かった。 半ば奪うように、洗濯物を受け取った時、父は少し困ったような顔をした気がしたが、無視していると、私の後に続いて居間に入ってきた。 私と父は床に洗濯物を置くと、手分けして畳み始めた。 「今日は随分早かったね。何かあったの?」 「何かって……。まさか、昨日自分で言ったことを忘れたのかい」 そう言うと、父は台所に行き、何か白い箱を持って居間に戻ってきた。その時、自分の中で昨日のことが鮮明に蘇ってきた。父は箱を開けて中身をそっと出すと、テーブルに置いて言った。 「17歳のお誕生日おめでとう」 箱の中に入っていたのは、白い生クリームと赤い苺のホールケーキだった。 私と父は急いで洗濯物を畳むと夕食の用意をした。 今日の夕食はカレーライスとサラダにするつもりだったので、カレーとご飯を温め直し、サラダを冷蔵庫から出した。 私は父と共に夕食を食べながら昨日の夕食時の会話を思い返していた。
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