第1章

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夢の中で、私は見知らぬ玄関で靴を履いていた。近くには布で出来た手縫いのバッグが置いてあった。 「今から出かけるの? もう遅い時間よ」 「だいじょうぶ。すぐそこに行くだけだから! ちぃちゃんに、わすれものをとどけるだけだよ。 それに、わたしはもう7さいだよ。ちぃちゃんにとどけたら、すぐに帰れるよ!」 私は後ろを振り返って、見知らぬ女性に答えた。その女性の顔は、墨で塗り潰されたように黒くなっていて、姿形も、表情も、全く見えなかった。 それでも、ちぃちゃんという子の忘れ物を届けに行こうとしている私を心配しているのは、雰囲気から、なんとなくわかった。 見知らぬ玄関、見知らぬ女性。 でも、何故かとても懐かしいと思った。 「じゃあ、行ってきまーす」 「あっ。待ちなさい! 近道でも、絶対に墓地の中を通っては駄目よ。夕方に墓地の中を通ると、神かく……」 私は女性の話を最後まで聞かずに、家を出た。 空は炎のように、とても赤かった。 そして、目の前が一回転すると、真っ白になった。
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