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私は朝食を作りながら、昨夜の夢について考えていた。
夢の中で視界が真っ白になった後、私は飛び起きるように目覚めた。
目が覚めた時、強烈に後悔と、懐かしい気持ちが芽生えた。
自分自身が覚えていなくても、体が、五感が、覚えているような、そんな感じだった。
「おやっ。お魚のいい匂いだね。でも、焦げた匂いもするような……」
「あっ」
夢について考えているうちに、コンロで焼いていた魚が焦げていた。
私は慌てて火を止めた。父に言われなければ、今朝の朝食のおかずがなくなるところだった。
「有り難う。父さん」
私は父に礼を言った。父はさっき起きたばかりのようで、髪に寝癖がついたままだった上、寝間着姿だった。
「いつもと違って元気がないけど、何かあったのかい?」
「実は……」
私は躊躇いつつも、父に昨夜の夢について話すことにした。
たかが夢。と、思わなくもない。
しかし、父にこれ以上迷惑をかけたくないと考え、包み隠さず話そうと思った。
「そうか……。そんな夢がね……。もしかすると記憶を取り戻してきたのかもしれないね」
「記憶を……」
父は顎に手を当て頷きながら言った。
私はそんな父の言葉をどこか遠くで聞いているようだった。
「17歳というのは外面だけでなく、内面も大きく成長する歳だ。大人になるにつれて、少しずつ記憶を思い出してきたのかもしれないね」
父はそう言って笑ったが、私は不安な気持ちで一杯だった。
もしも、このまま全てを思い出したら〈今の〉私はどうなってしまうのだろう。
でも、それ以上に心配していることがあった。
――全てを思い出したら、もう父と共に暮らすことができないかもしれない。
そればかりが頭の中を巡った。
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