第1章 翼を広げて

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コンコンッ ガチャ 「あ?……なんだ、ソラか。こんな早い時間に来るなんて珍しいじねぇか。どうかしたのか?」 ソラがノックした扉から出てきたのは、赤茶色のモジャモジャの髪と髭を蓄え、その間からギラギラとした緑色の瞳を覗かせた、ソラよりは大きいが、人間の十歳前後の子供くらいの身長しかない、がっしりとした男だった。 「おはよう、バトさん。実はお願いがあってきたんだ。」 いつもと違うソラの様子に、首をかしげるバト。 「あぁ?なんだ、改まって。まぁいい、とりあえず上がれ。」 バトに招き入れられた先には、バトと同じような見た目だが、髪と瞳は黒く、目付きが鋭いドワーフの男が座っていた。 「おはよう、ジオさん。」 「あぁ。……それで、頼みってのはなんだ。」 ジオは外見に違わず素っ気ない話し方をする。 「僕に、鍛冶屋の仕事の手伝いをさせて欲しいんだ。」 「……それは、弟子入りしてぇっつう事か?」 訝しげな様子でジオが尋ねる。 「弟子入りは、許してくれても出来ない。僕は魔法学園に行くから。手伝わせて貰えるだけでいいんだ。午前中だけだけど……。」 「魔法学園?なんでまた。そんなら、うちを手伝ったって仕方ないだろ。」 バトが意味がわからないといった様子で尋ね、ジオも眉間に皺を寄せてソラを見ている。 「うーん。説明すると長くなるんだけど……。」 ソラは自分の決意と、家族で話し合った事を話した。 「なるほどな。だから午前中だけうちを手伝いてぇってわけか。わしは別に構わん。掃除してくれるだけでも助かるしな。ジオは?」 「……こき使ってやる。覚悟しろ。」 無表情だがどこか楽しそうなジオ。 「うん!でも、発作が起きたら、急に来られなくなるけど……。」 「あぁ。それはちゃんとわかってる。心配しなくても、来たら楽ができるが、来なくてもいつも通りだ。」 手伝うと言いながら、急に動けなくなる自分の体を思い出して落ち込むソラだが、バトには関係無いらしい。 ジオも同感な様で、無表情が崩れる事はない。 「うん!ありがとう!バトさん、ジオさん。今日からよろしくお願いします!」
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