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「たらいまぁ~!」
シルバが帰って少したち、ソラも目を覚ましたころ、玄関の方から元気な女の子の声がした。クラウドのおかえりと言う声も聞こえてくる。
間もなく、ソラの部屋の扉が勢いよく開き、くすんで所々継ぎはぎが見られるが、可愛らしい赤色のワンピースを着た、明るい茶色の癖のあるショートヘアーとクリクリとした黒い瞳が特徴的な、活発そうな女の子が入って来た。
「おにぃちゃん!たらいま!」
部屋に入って来た勢いのままソラのベッドに駆け寄ると、満面の笑みでそう告げた。
「……ぉかえり、ハル。……今日は何をして遊んだの?」
ソラは呼吸を乱さないようにゆっくりと、だが嬉しそうに答えた。
その光景を部屋の外から見ていたクラウドは、微笑ましそうな表情を浮かべ、そっと部屋の扉を閉めた。
外からは水の音やトントントンという音が聞こえてきていたから、おそらく夕食を作っているのだろう。
「あのね!あのね!きょうはね!……。」
ソラが、ハルの一日の出来事を、時折相槌を打ちながら聞いていると、小さな鍋と食器を持ってクラウドが戻って来た。
すると、
「ぃや~ん!ハルそれきらい~。」
と言って、部屋から走り出て行ってしまった。
恐る恐る戻ってきて、部屋の中をチラチラと覗いているが……。
クラウドとソラはハルのその様子を見て苦笑を浮かべる。
「ハル、これはハルのじゃないから安心しなさい。もうご飯が出来ているから先に食べてなさい。」
クラウドの命令ではなく窘めるような口調に安心したのか、ハルはおとなしく扉を閉めて食事の乗ったテーブルへと歩いて行った。
「今日は薬草を見つけたから薬草粥を作ったよ。味は出来るだけ消すようにしたんだが……。」
クラウドは浮かない顔をしてソラに告げる。
クラウドの表情と、この部屋に充満する匂いから、上手くいかなかったことはバレバレである。
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