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閑話休題
医者の表情はどこか悲しげだ。事情を知っていたとしても、患者になにもしてやれないというのは、医者として悲しいものなのだろう。
「そうかい。あまりにも酷い場合は、我慢せずに言うようにね。」
そんな医者の気持ちを知ってか知らずか、少年は僅かに頷いた。
そんなやり取りをしていると、先程から部屋の外でしていた物音が足音に変わり、部屋の扉が開いた。
「ただいま、ソラ。調子は……あぁ、シルバ先生いらしてたんですか。いつもありがとうございます。」
扉の向こうから現れたのは、明るい茶髪と暗い紫色の瞳を持ち、焦げ茶色のくたびれた服を纏った男性で、少し埃っぽい。
この男性曰く、少年の名前はソラ、医者の名前をシルバと言うらしい。
「いいえ。私は様子を見るくらいのことしかしていませんから。クラウドさんもお疲れ様です。」
依然、悲しげに告げるシルバ。
「十分ですよ。ソラも、先生が来てくださった日は安心するのか、いつもより調子がいいようですから。」
クラウドと呼ばれた男性はソラの顔色を見て体調がわかったのだろう。
そう告げられたシルバは、悲しげな表情を意外そうな表情に変え、確認するような視線をソラへと送る。
ソラは言葉にはせずとも、それが肯定だとわかる淡い微笑みをシルバに返した。
「……ぉかえり。……父さん。」
シルバからクラウドに視線を移したソラは、静かに告げたのだった。
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