第1章 翼を広げて

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クラウドの仕事は猟師であり、山にいる魔物を探すついでに、薬草を見つけては、薬を飲まないソラのために採ってくるのだ。 「……ぅん、ありがとう。……今日は何の薬草?」 ソラはそんな父の気持ちを敏感に感じとり、気付かないフリをした。 「体力が回復するのと、少しだけ熱をさげる作用がある薬草だ。少しだけでもいいから食べて欲しいんだが……。」 そう言いながらクラウドはベッドに横たわっていたソラを支えるように起こす。 ソラは上半身を起こした体勢になり、布団の中にいて見えなかった体を見せた。 濃くはない渋い緑の浴衣を纏った体は細く、袖から見える手は日に焼けること無く白い。 「……前にも食べたことあるし、大丈夫。……僕は食べ終わったら寝てるから……父さんは、ハルの所に行ってあげて。」 支えられていた体を安定させると、ソラは食器を取りながら、いつものセリフになりつつある言葉を、クラウドに告げた。 ハルはまだ四歳なので、一人で長時間居させるのは心配だ。 二人ともそう思うので、ソラは出来るときは一人で食事を取る。 それに、薬草粥は食べづらいので、時間がかかり、二人以上居ると気を使うのだ。 ソラは、クラウドがポンポンと軽くソラの頭を撫でて、部屋から出ていくのを見送り、お粥をよそって食べ始める。 「……う゛っ……ケホッケホッ……。」 口の中に広がる、何とも言えない苦みに顔をしかめ、軽く噎せつつも、ゆっくりと時間をかけて夕食を終えたソラは、食器をサイドテーブルに移し、眠りに就いたのだった。
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