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翌日から、なぜかタツオたちは東園寺(とうえんじ)家の別荘でも周囲から浮くようになった。リゾートホテルのような建物には、進駐官養成高校の生徒だけでなく、近衛(このえ)四家の子女も大勢避暑にきていた。いっしょに育ったも同然なので、タツオの顔見知りも何人もいる。その誰もがタツオと目をあわせなくなったのだ。
朝のダイニングルームで、バイキングの料理が山盛りになったトレイをもって空席に座る。すると同席していた者がすっと静かにテーブルを離れ、タツオがひとりになってしまう。3組1班の4名と東園寺彩子(さいこ)、それに残念なことだが情報保全部の柳瀬波光(やなせなみてる)くらいしか話をできる人間がいなくなってしまった。
タツオはいつも誰かといっしょにいることを好まない。ひとりで本を読んだり、音楽を聴いたりするほうが性にあっている。生まれつき孤独を愛する性格だ。それでも意識的にまわりの人間から忌避(きひ)されるのは、じわじわと胸にこたえた。
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