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 あのヘリコプターによる襲撃以来、サイコと初めて顔をあわせたのは、中一日をおいた朝だった。誰もいないテーブルでヤシの木が植わった中庭を見ながら、トーストをかじっているとがしゃんとトレイが目の前に降ってきた。驚いて顔を上げるとサイコがなぜか怒り顔で立っている。 「タツオ、ここ空(あ)いてる?」  返事を聞く前に椅子(いす)を引き、お嬢さまは座ってしまった。 「……空いてる」 「どうして、そんなに暗い顔で、ひとりぼっちで朝ごはんなんてたべてるのよ。あんた、ずっと下向いてたよ」  自分では普通にしているつもりだった。 「そうか。ごめん。気をつける」  サイコはニンジンジュースのコップをもつと、生ビールでも飲むようにぐいぐいと傾けた。白い喉(のど)がうねって、搾(しぼ)り立てのジュースを流しこんでいく。
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