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「おまえ、今、人殺しと言ったのか!?どういう事だ!黙ってないでとっとと言え!」
汚い。刑事の口から唾が飛んだのが見えて、ぼくは盛大に顔をしかめた。別の人にしてくれないかなと眉を寄せながら思っていると、先程顔を上げてぼくの方を見た若い刑事が一生懸命なにかを書いている姿が目に入る。
「すいませんそれ・・・陳述書、とかいうヤツですよね」
「 それがどうしたっ!書かれたくない事でもあるのか!?アアッ!?」
「いえ、その・・・あれって、ぼくが書いちゃだめなんですか?」
絶句した目の前の刑事の顔を、ぼくはじっと見つめ返した。この刑事には申し訳ないが、なにか言うたびに怒鳴られるのも、唾が飛んでくるのも嫌だった。どこから話せばいいのかもよく分からないし、だったらこっちの方が手っ取り早い。
「いつ、どこで、誰を、どうやって、どういう目的で殺したか、とりあえずそれを書けばいいですかね?それを見ながらの方が、刑事さんも質問しやすくていいでしょう?」
「・・・・・・お前、何を言って・・・」
「ぼくは元々、今日辺り自首しに行くつもりだったんです。『人を四人殺しました』って。その前に、本当に最後に一回だけ、友人に会いたかっただけなんです。そんなに怒鳴らなくったって、必要なことは全部素直に書きますよ」
ぼくはそう言うと若い刑事の方に向かって「すいません、紙とペンを貸して下さい」と頼んだ。ぼくは戸惑ったような表情をしている刑事からペンと紙を受け取ると、まずは詐欺の件についてから順を追って書き始めた。
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