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「恭也はさ、なんで、ぼくを、一回も、見舞いに来てはくれなかったの・・・?」
「・・・・・・!」
「ずっと、引っかかっていたんだ。なんでぼくは、ここまで来てしまったんだろうって。なんで恭也を頼らなかったんだろうって。他に『仕方』はあったはずなのに、『恭也に頼る』って選択肢も、確かにあったはずなのに、なんでぼくはそれをしなかったんだろう。出来なかったんだろう。なんでその選択肢が、ぼくには『存在しなかったんだろう』」
「岬・・・お前、何言っ・・・」
「・・・恭也、実は、ぼくはね」
「おい貴様、そこを動くな!」
そう言って駆けつけてきた警官に銃を向けられ、ぼくはきょとんとした。花を散らかしたから通報されてしまったのだろうか。
「散らかしちゃってすいません。でも今、ちゃんと片付けてますから・・・」
「ふざけた事を言ってるんじゃない!振り込め詐欺の容疑者として逮捕する!」
・・・ああ、そっちか。そう思った。そうかシン達は捕まったのか。指名手配でもされてたのかな。花なんて撒き散らしたものだから、誰かが通報したのだろうか。
ぼくは一応「すいません、片付けてからでもいいですか?」と、怒られそうなのを百も承知で刑事にたずね、呆然とぼくを見つめている恭也の顔を眺めていた。恭也の手にある犬のぬいぐるみと白い花束を眺めながら、先におみやげを探してよかったなと、そんな風に思っていた。
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