7♯

30/40
前へ
/40ページ
次へ
私の目は太陽に釘づけになってしまう。 数秒、湯気で曇った薄暗い浴室の中で、互いに見つめあうと、 「空、見過ぎだから」 と、恥ずかしそうにはにかむ太陽。 「あっ、ごめっ」 咄嗟に目を逸らし、太陽に背を向けた。 「ふっ、まさか空と一緒に風呂に入るとはな…」 エコーの掛った太陽の優しい声が、背後から聞こえてくる。 本当に。 まさか、キスしかしてない私達が一緒にお風呂に入るなんて… シャワーを浴びる太陽の吐息が、私の鼓膜を揺らす。 その吐息を聞くたびに、緊張と高揚感で頭がおかしくなりそうだ。 キュッとシャワーの蛇口を締める音がする。 「入るよ?」 甘ったるい太陽の声に眩暈がする。 「…うん」 尚も、私は背中を向けたまま返事をする。 そして、チャプンと水面を弾く音と共に、浴槽の水かさが増していく。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加