episode5・①

25/37
44人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
俺は、いつの間にかそんな彼女の姿を目で追うようになっていた。 挨拶だけでなく、少しずつ話をするようになると、憧れだった気持は核心に変わった。 あの子が好きだ。 でも俺は、彼女に告白する勇気なんかなかった。 そんな俺の気持を知って知らずか、美杉は目が合えば、いつもにっこり微笑んでくれた。 もともと美杉は人見知りしない性格で愛嬌がいいから、友達も多かった。だから、俺にだけ特別そうしていたわけじゃないだろう。 でも、そんな考えには及びもしなかった当時の俺は、自分にだけ向けられた微笑だと舞い上がった。 美杉が微笑んでくれれば、きつい練習だって、ばかみたいに張り切って乗り切ることが出来た。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!