11

4/13
前へ
/31ページ
次へ
私は、すかさず病院へと走った。 躊躇なんて、これっぽっちもしなかった。 私は… 私は、ただ、あなたに会いたい。 病院はガラス張りの割と新しい病院だったが、建物自体は小さいため、すぐに太陽の病室は見つかるだろう。 はやる気持ちを抑え、一室一室、太陽の病室を探した。 ――“笠原 太陽” はぁ……見つけた… そこには、紛れもなく太陽の名前が書かれたプレートが貼られていた。 太陽は2度も私の前から消えた。 今度は絶対に怒ってやるんだから。 引っ叩いてやるんだから。 強気な心意気とは逆に、私の足は凍りついたように全く動かない。 まるで、廊下に私の足がくっついているみたいだ。 あの冷たい波に、攫われそうになっても必死に堪えたんだ。 太陽は、絶対にまた、私に眩しい笑顔をくれる。 うん、大丈夫。 大丈夫。 大丈夫。 自分の心に暗示をかけるように繰り返した。 そして、震える息で大きく深呼吸をし、震える手で扉を開けた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加