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私は大学で看護の勉強をしながら、ここへ毎日のように通っている。
以前より、はるかに慌ただしくなった毎日を送り、そんな感情に浸ることをわざと、避けていたのかもしれない。
時間があると、余計なことばかり考えてしまうから、毎日夜遅くまでここで太陽と一緒に過ごし、ヘトヘトになって帰宅し、死んだように眠る。
その繰り返しだった。
「太陽、じゃ、私帰るね?」
時計を見ると、11時をまわっていた。
「あっ…まって」
太陽がふいに私に向かって、手を差し伸べた。
「え?どしたの?太陽」
太陽の差し伸べられた手を握ると、力なく私の手を握り返す太陽。
「おねあい…がっ…あるんあけど」
「うん?」
「そら…を…だちた…い」
――「えっ?」
耳を疑った。
“空を抱きたい”
太陽…今、そう言ったの?
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