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「それで、結婚式はどうだった?」
いつの間にか、妻の機嫌が治っていた。話題が、不満から、今日の披露宴の感想へとシフトし、顔に笑みが戻っている。
正直眠たかったけれど、ここで話を切り上げたようものなら、ますます彼女の機嫌が悪くなることは目に見えていた。だから、込み上げるあくびをかみ殺し、相槌を打った。
「まあ、良かったよ」
「どんなところが?」
どんなと言われても…。
こういう時、女ならドレスや着物がどうとか、髪型がどうとか、余興がどうだとか、そういう話題に行き着くのだろうが、生憎、男はそれほど真剣に披露宴に参加しているわけではない。
懐かしい顔ぶれと語り合う事が最大の目的なのだから。
しかも、今日語り合った事といえば、それぞれの妻に対する不満(それも性生活についてだ)なわけで、そんな話は口が裂けても言えなかった。
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