43人が本棚に入れています
本棚に追加
帰宅すると、妻のミキが起きていた。
「おかえりなさい」
甲斐甲斐しく迎えに出た妻に、「寝ててもよかったのに」と言ったのは、気遣いのつもりだったのに、しかし、妻はむっとしたような顔をした。
「そうしたかったんだけど、大がぐずって起きちゃったの」
ぷいと踵を返すと、妻はキッチンから夜食を作ろうかと訊ねた。
「いや、いいよ。大丈夫」
本当は、お茶漬けでも欲しかったけれど、妻の目の下に浮かんだ灰色の隈を見たら、そんなことは言えなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!