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そんな濃密な夢から目覚めた俺は、部屋の汚さに愕然とした。
早くも出したこたつの上には、酒の缶が散乱し、鍋もそのまんま。
何故かベッドの下から引っ張り出されているのは、俺のバイブルであるエロ本だった。
それを元あった場所へそっと戻すと乱れた頭を掻いて、ベッドで腹を出して寝る大和を叩き起こす。
各自でシャワーを浴び、朝食を摂ると三人で大型のショッピングモールへと出掛けた。
部屋の掃除をするついでに、家具の配置も変えるとなると物が多過ぎて苦労しそうだが、そんな時は収納ボックスが大変重宝される。
それを買いに来た。
が、大和は早速迷子になった。
「...消えたね。迷子センターって何処だっけ」
「おいおい...18にもなって迷子センターで呼ばれたら流石の大和でも泣くぞ」
真剣な顔をして言うものだから、少々引いてしまう。
「少ししたら帰ってくるよ。あれ!?峯、これ良くない?」
「...何それ、趣味悪。僕なら断然こっち」
二人で真剣になって選び、無事購入。
どうやら俺の趣味やセンスは悪いらしく、殆どを彼に否定された。
かなりの時間が経過したが、戻ってくる気配のない大和に隠れてタピオカドリンクを飲む。
「苺...?女の子みたいだな」
「...苺美味いもん。そう言う君は抹茶だなんて...ジジイか」
「何でだよ!......御前、俺に違和感とか感じないの?」
目の前に座る裕太が、曖昧に声を溢す。
そして、目を細めてうっすら笑った。
「僕のことを避けたり、苗字で呼んだり...かな」
「何だ、気付いてたのかよ。避けたことについては謝る、悪かった」
一瞬きょとん、としたが、その顔もいつも通りの無表情に戻される。
「いや、いいんだ。僕はてっきり勘付かれたのかと思っちゃった」
「勘付く?...何を」
そう聞き返した俺に、裕太は遠くを見詰めながら答えた。
「別に、なんでもないよ」
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