4

34/60
前へ
/319ページ
次へ
買ったのか。 それにしては紫なんて珍しい色を選ぶと思った。 大和には少々大人っぽ過ぎる色だな。 「何回電話しても出なかったから、何かあったのかと思ったよ。取り敢えず何もなくて良かった」 珍しく笑みを浮かべた裕太が、大和の頭をポンポンと叩く。 こいつ、大和には頻繁に笑いかけんのかよ。 俺には全然笑わないくせに...! 「...ごめん、心配してくれてありがとう。ちょっとトイレ行きたくなってさ...」 と、どうやら腹の調子が悪い様子。 見えてしまったのは掌に残る、くっきりとした爪の跡だった。 .......力み過ぎたのかな、後で正露丸渡さなきゃ! その日は無事に帰宅し、帰るなり大和に部屋の掃除を手伝って貰った。 ーーーーーーー ーーーーーーーーー 本格的に冬へ近づいてきたのだろう、風が冷たい。 日に日に元気が無くなる大和の姿を見て、此方も酷く心配をしてしまう。 記憶力が悪く、いつも5W1H(いつ、どこで、だれと、なにを、どのように)を覚えていない彼が何かを思い出し事あるごとに溜息を吐く姿は、当然胸が痛む。 夏以来、若干痩せたようにも見えた。 そりゃそうか、肉を食べないんだもんな。 「...大和、今日も元気ないね」 「ん...。峯、御前が元気付けて来いよ。一緒にパンケーキ食った仲だろ?」 「あー、そんなこともあったね。大和は覚えてないだろうけど」 ポケットに手を突っ込んだ裕太は、元気のない大和の所まで歩み寄り、飴玉を置いて戻って来た。 彼なりに、元気付けたつもりなのであろう。 裕太にしては良くやったと思う。 二人で帰る準備をしていると、目の前にひょっこりと顔を出したのは、まさかまさかの姫神教授だった。 「えっ!?姫神...せんせ!」 「やあ、久し振りだね」 「ひ、久し振りもなにも...外国へ飛び立ったんじゃなかったんですか!?」 「それがねぇ、あっちの手違いで予定が狂ってしまったんだよ。再来週になった」 疲れた顔をして失笑した彼は、参った、と言うかの如く肩を竦めた。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1601人が本棚に入れています
本棚に追加