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「そうだったんですか!お疲れ様です」 「うん、ありがとう。おや...君は峯裕太だね」 目を細めて微笑む姫神教授だが、裕太は思いっきりガンを飛ばしていた。 ただでさえ無表情かつ無口で怖く見えるのに今は余計怖い。 「......」 「うーん、実に興味深いねぇ。機会があったら二人っきりで話さないかい?君のことをもっと知りたいんだ」 なんだその台詞は。 女が言われたらイチコロであろう、そんな言葉を軽々と吐いた彼は再び笑う。 「...僕はあんたに興味ない」 「そう...それは残念だな。じゃあ私はこれから会議があるから行くよ」 ふわりと香る柔軟剤の匂い。 優しく頬を撫でられたかと思うと、綺麗に弧を描く唇が俺の耳元へ寄せられた。 「今度一緒にお茶しような、咲夜」 「ふぁ!?」 一瞬不敵な笑みを浮かべた姫神教授様は、艶めかしいお声でお囁きになって俺の腰を砕いて行った。 「はぁ...姫神先生って、本当いい男だよなぁ」 「......」 「咲夜、って呼ばれちゃったよ...」 珈琲カップを見詰めながら呟く俺に鋭い視線を送るのは峯裕太本人だが、俺は全然気にしませんよ!! だって、本当に素敵だったんだもんっ! 「俺も、あんな男になりたいなぁ」 「無理だね」 「いや、分かってるけどもさ!」 「っ...!」 湯気の立ち上がるカフェモカを一口飲んだ彼が、身体をビクリと震わせた。 ん? 「...猫舌なこと忘れてた。火傷したんだけど」 赤い舌をペロリと出して、ヒリヒリする部分を指差す。 確かに...ちょっと赤くなってるかも。 「大丈夫?口ん中は治りが早いから、すぐ治ると思うけど」 ガシッ 「えっ...あの、何ですか。これ」 「...太古の昔から怪我をした部分は舐めれば治ると言われてきた」 いや...だからって、何で俺の顎を掴むんですかね。 「キス、しよっか...」
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